「CDジャケットを依頼したいけれど、どんなデザインにすればいいか分からない」「アルバムの世界観はあるけれど、それをうまくビジュアルにできない」「ジャケットだけでなく、歌詞カードや帯、盤面まで統一したい」。CDやアルバムを制作するとき、こうした悩みを持つアーティストや音楽関係者の方は少なくありません。

studio MONDAY BLUEでは、CDジャケットを単なる「表紙」としてではなく、楽曲・歌詞・アーティストの個性を、手に取れる作品へ翻訳するためのデザインだと考えています。ジャケット、歌詞カード、バックインレイ、帯、盤面。それぞれを別々に制作するのではなく、アルバム全体に流れる一つの世界観として設計していきます。

この記事では、実際に制作した瀧本りおな『A to Z』と、律諤士『闇堕ちし狂う亡者共』という方向性の大きく異なる2つのCDアートワークを例に、音楽の世界観をどのように読み取り、デザインへ落とし込んでいるのかをご紹介します。

CDジャケット制作で最初に考えるのは「見た目」ではない

CDジャケットを制作するとき、「黒を使いたい」「写真を大きく見せたい」「かっこいい雰囲気にしたい」といった見た目の方向性から考えることもできます。ただ、MONDAY BLUEでは、その前にアルバムそのものを理解することを大切にしています。

アルバムタイトルにはどんな意味があるのか。収録されている楽曲にはどんな感情が流れているのか。歌詞には何が書かれ、アーティストはこの作品で何を伝えようとしているのか。そうした情報を読み解きながら、CDを手に取った人にどんな印象を残したいのかまで整理していきます。

そこから考えていくことで、その作品だからこそ成立する色や写真、モチーフ、レイアウトが見えてきます。今回紹介する2作品も、同じ「CDデザイン」という仕事でありながら、最終的なビジュアルはまったく異なるものになりました。

制作事例① 瀧本りおな『A to Z』|26歳の「全部」を一枚の世界へ

瀧本りおなさんのアルバム『A to Z』では、アルバムタイトルそのものがデザインを考える大きな起点になりました。AからZまでは26文字。そして、この作品は瀧本さんが26歳を迎える節目と重なっています。

さらに「A to Z」という言葉には、「最初から最後まで」「全部」という意味があります。嬉しかったことも、苦しかったことも、恋愛も、人との出会いも、音楽も、ライブで過ごしてきた時間も、そのすべてが現在の自分をつくっている。そんなアルバムのコンセプトを、CDパッケージ全体へ展開しました。

楽曲そのものをグラフィックのモチーフにする

『A to Z』では、収録されている9曲それぞれから象徴的なモチーフを抽出しています。たとえば『愛とハイボール』ならハイボール、『タイムキラー』なら砂時計、『KU・CHI・DA・KE』なら唇、『Black Candle』ならキャンドルです。

こうした楽曲モチーフをステッカーのようなグラフィックへ変換し、写真、ハート、破れた紙、テープ、手描き風の要素などと一緒に重ねました。あえて情報をきれいに整理しすぎず、さまざまな記憶や感情が混ざり合うような密度を残しています。

人生そのものは、必ずしも整然と分類できるものではありません。いろいろな出来事や感情、好きなもの、苦しかったことが重なりながら一人の人間をつくっていく。その感覚を、スクラップブックのようなCDアートワークとして表現しました。

瀧本りおな『A to Z』CDアートワーク制作実績

制作事例② 律諤士『闇堕ちし狂う亡者共』|社会への怒りを「現実のような異世界」へ

メタルバンド・律諤士『闇堕ちし狂う亡者共』では、『A to Z』とはまったく異なるアプローチを取りました。歌詞や作品コンセプトから読み取ったのは、社会への怒り、不信、権力への反発、群衆の混乱、そして人間の理性そのものが崩れていくような感覚です。

そこで、単純に「メタルだから黒く、激しくする」という方向ではなく、実際の社会で起きた出来事を撮影した記録写真のように見える世界を構築しました。デモや群衆、プラカード、政治や権力を象徴する建築物、新聞や記録資料のような断片を組み合わせています。

一見すると実写。でも、よく見ると何かがおかしい

ビジュアルを遠くから見ると、現実のデモや抗議活動を撮影した写真のように見えます。しかし細部まで見ると、群衆の中には異形の存在や、仮面のような顔を持つ人物、人間なのかそれ以外なのか判断できないシルエットが紛れています。

こうした存在は、最初から分かりやすい「怪物」として見せているわけではありません。まず現実の社会風景として認識してもらい、その後で小さな違和感に気づく。そうすることで、狂気が突然外側から現れたのではなく、いつの間にか日常や社会の中へ入り込んでいたような不気味さを表現しました。

律諤士『闇堕ちし狂う亡者共』CDアートワーク制作実績

同じCDデザインでも、作品によって答えはまったく違う

『A to Z』と『闇堕ちし狂う亡者共』は、完成した印象こそ大きく異なりますが、制作方法には共通点もあります。どちらも写真を使用し、複数の素材を重ねながら、一枚のシンプルなグラフィックでは表現できない世界を構築しています。

それでもまったく違う作品になったのは、先にデザイン手法を決めていないからです。「コラージュが流行っているから使う」「メタルだから黒にする」「今っぽい書体だから使う」という順番ではなく、この音楽を視覚に置き換えるなら何が必要なのかから考えます。

『A to Z』に必要だったのは、人生のさまざまな記憶を包み込むための密度でした。一方、『闇堕ちし狂う亡者共』では、現実と虚構の境界が少しずつ崩れていくような違和感が重要でした。同じ技法でも、作品の意味が変われば使い方も変わります。

CDジャケットだけでなく、歌詞カード・帯・盤面までデザインする理由

CDアートワークには、WebやSNSのグラフィックにはない特徴があります。それは、実際に手に取って、開くことができることです。

表紙を見る。裏返す。ケースを開く。ブックレットを取り出す。歌詞を読む。ディスクを外す。CDという物理メディアには、こうした時間の流れがあります。だからこそ、ジャケット一枚だけではなく、「どの順番で何が見えるのか」まで設計できます。

『A to Z』では、CDを外した先に本人からの言葉を

『A to Z』では、ディスクを取り外したときに初めて見える場所へ、瀧本さん本人からのメッセージを配置しました。購入した人がケースを開き、ディスクを手に取る。その行動の先に初めてアーティスト本人の言葉が現れる仕掛けです。

画面上でデザインを見るだけでは体験できません。実際にCDを手にした人だからこそ発見できるものをつくることも、パッケージデザインの面白さだと考えています。

『闇堕ちし狂う亡者共』では、混乱の「その後」を見せる

一方、『闇堕ちし狂う亡者共』では、外側に群衆の怒りや社会の混乱を描きました。しかしディスクを外した内側に現れるのは、人の気配が消えた荒廃した建築物です。

外側にある騒がしさから、内側にある静けさへ。ケースを開き、ディスクを取り外すことで、群衆の混乱から「そのすべてが終わった後」の虚無へと時間が進んでいく構成にしました。

CDはジャケット一枚ではなく、パッケージ全体を使って一つの物語をつくることができるメディアです。

歌詞カードも「文字を置く場所」ではない

CD制作では、歌詞カードやブックレットのデザインも重要です。もちろん、まず必要なのは歌詞をきちんと読めることですが、その読みやすさを保ちながら、アルバムの世界観をさらに広げることもできます。

『A to Z』では、写真や楽曲モチーフ、ステッカーなどを使い、ページをめくるごとに瀧本さんの世界が広がっていくように構成しました。対して『闇堕ちし狂う亡者共』では、群衆、新聞、記録資料のようなビジュアルを組み合わせ、社会で実際に起きた出来事の資料を読み進めているような感覚を目指しています。

どちらの場合も、デザインによって歌詞そのものを邪魔しないことが重要です。歌詞を主役として残しながら、その周囲に作品世界を構築する。「歌詞を読む」という行為も、アルバムを体験する時間の一部として考えています。

CDジャケット・アルバムアートワークを依頼するとき、何を用意すればいい?

「CDジャケットを依頼したいけれど、まだデザインのイメージが決まっていない」という段階でも問題ありません。最初から完成形が決まっていなくても、楽曲やアーティストについて伺いながら方向性を整理できます。

ご相談時には、次のような情報があると、より具体的なご提案が可能です。

  • アルバム・シングルのタイトル、収録楽曲や歌詞
  • アーティスト写真など使用したい素材
  • アルバムのコンセプトや届けたいイメージ
  • 好きなCDジャケットや参考デザイン
  • 希望する色や雰囲気
  • ジャケット、歌詞カード、帯、盤面など必要な制作物
  • CDプレスを依頼する印刷会社と希望納期

もちろん、すべてが揃っている必要はありません。「楽曲は完成しているけれど、デザインについては何も決まっていない」「なんとなく世界観はあるけれど、どう説明すればいいか分からない」といった状態からでもご相談いただけます。

ヒアリングや楽曲・歌詞の内容をもとに、その作品に合ったビジュアルの方向性を整理していきます。

CDデザインは、入稿データまで考えて完成する

CDパッケージの場合、デザインが完成すればそのまま印刷できるわけではありません。実際のCDプレスでは、印刷会社が指定するテンプレートや仕様に合わせて入稿データを制作する必要があります。

ジャケット、ブックレット、バックインレイ、帯、盤面では、それぞれサイズや塗り足しなどの仕様が異なります。画像解像度、CMYK、インキ濃度、フォント、レイヤー、アピアランスなど、印刷工程を考えた調整も必要です。

studio MONDAY BLUEでは、ビジュアル制作だけでなく、印刷会社の仕様に合わせた入稿データの作成まで対応しています。 デザインと印刷データを別々に考えるのではなく、実際にCDという形になるところまでを一つの制作工程として扱っています。

ビジュアル・グラフィックデザイン制作について

「かっこいいジャケット」ではなく、その音楽にしかないデザインを

CDジャケットは音楽そのものではありません。それでも、リスナーがその作品に触れる最初の入口になることがあります。

だからこそ、「なんとなくかっこいい」「なんとなく今っぽい」だけで終わらせるのではなく、楽曲を聴き、歌詞を読み、アーティストの考えを知るところから制作を始めます。その中から作品にしか存在しない色や写真、モチーフ、質感を探し、ジャケット、歌詞カード、バックインレイ、帯、盤面へ展開していきます。

音楽の世界観を、目に見えて、手に取れる形へ翻訳する。

それがstudio MONDAY BLUEの考えるCD・アルバムアートワーク制作です。

CDジャケット・アルバムアートワーク制作のご相談

studio MONDAY BLUEでは、CDジャケット単体のデザインから、アルバム・シングルのパッケージ一式まで制作しています。歌詞カード・ブックレット、バックインレイ、帯、盤面、印刷会社への入稿データまで一貫して対応可能です。

「アルバムの世界観はあるけれど、どうデザインにすればいいか分からない」「楽曲や歌詞からビジュアルを考えてほしい」「ジャケットだけでなく、CD全体の世界観を統一したい」。そんな段階からでもご相談いただけます。

CDジャケット・アルバムアートワーク制作について相談する

今回紹介した制作実績

瀧本りおな『A to Z』CDアートワーク
26歳とA〜Zの26文字を重ね、「自分をつくった全部」を写真・楽曲モチーフ・コラージュによって表現したCDパッケージ。

律諤士『闇堕ちし狂う亡者共』CDアートワーク
社会への怒り、不信、混乱を、実写風の群衆・異形・記録資料・荒廃した風景によって表現したCDパッケージ。