「ストーリー」と聞くと、映画や小説、漫画のようなエンターテインメントを思い浮かべるかもしれません。
企業がストーリーを語るというと、 「少し大げさではないか」 「もっと真面目に商品やサービスの特徴を説明した方がいいのではないか」 と感じる方もいると思います。
しかし、集客、採用、営業、ブランディング。 ビジネスのさまざまな場面において、 企業が持つストーリーは、決して軽視できないもの だと私たちは考えています。
商品やサービスそのものに大きな差がないとき。 価格も品質も、それぞれに良い部分があり、決定的な違いが見つからないとき。
最終的に私たちが考えるのは、
「誰から買いたいか」
ということではないでしょうか。
その会社はなぜ生まれたのか。
なぜその商品をつくっているのか。
何を大切にしているのか。
誰のために仕事をしているのか。
そうした企業の背景や考え方が、 商品スペックだけでは生まれない「選ばれる理由」 になることがあります。
この記事では、企業にストーリーが重要な理由と、 集客・採用・ブランディングにどうつながるのか、 そして企業のストーリーをどう見つければいいのかについて考えていきます。
企業における「ストーリー」とは何か
企業のストーリーというと、 壮大な創業秘話や、ドラマチックな成功物語を想像するかもしれません。
しかし、必ずしもそんな特別な出来事が必要なわけではありません。
たとえば、
- なぜこの会社を始めたのか
- なぜこの仕事を選んだのか
- どんな問題を見てきたのか
- なぜこの商品をつくったのか
- なぜ今のやり方を選んでいるのか
- 何だけは妥協したくないのか
- これから何を実現したいのか
こうした企業の背景にある出来事や考えを、 ひとつの流れとして相手に伝えること も立派なストーリーです。
たとえば、
「私たちは品質を大切にしています」
という言葉があります。
多くの会社が使っている表現なので、 それだけでは企業ごとの違いはなかなか見えません。
しかし、
以前この業界で働いていたとき、価格を下げるために品質が犠牲になる場面を何度も見てきた。だから、自分たちが会社を始めるなら、そこだけは絶対に妥協しないと決めた。
という背景まで伝わると、 「品質を大切にしています」という言葉の意味が変わります。
同じ情報でも、 なぜそう考えるようになったのかが分かることで、その会社らしさが見えてくる。
これが、企業のストーリーです。
ストーリーは「話を盛ること」ではない
企業のストーリーという話をすると、 「感動的なエピソードをつくらなければならない」 と思われることがあります。
しかし、ストーリーは会社を実際以上に良く見せるためのものではありません。
実際にはなかった苦労話をつくったり、 普通の出来事を必要以上にドラマチックに演出したりする必要もありません。
大切なのは、
事実を盛ることではなく、「意味」を見つけること。
なぜその出来事があったのか。
そこから何を考えたのか。
その経験が今の会社にどうつながっているのか。
そこを整理して伝えるだけでも、 十分にその会社だけの物語になります。
商品が似ているほど「誰から買うか」が重要になる
現在、多くの商品やサービスには競合があります。
Googleで検索すれば複数の会社が表示され、 それぞれが、
- 高品質
- 丁寧な対応
- 豊富な実績
- 安心価格
- スピード対応
- お客様第一
といった強みを掲げています。
もちろん、実際にはそれぞれの商品や会社に違いがあります。
しかし購入する側から見ると、 その違いが「この会社以外は考えられない」と言えるほど決定的ではないことも珍しくありません。
A社も良さそう。
B社にも強みがある。
C社も価格はほとんど変わらない。
そんな状況になったとき、 商品比較の外側にある情報が重要になってきます。
「この人にお願いしたい」
「この会社なら信用できそう」
「この会社を応援したい」
という感覚です。
つまり、商品同士の差が小さくなるほど、 「何を買うか」と同じくらい「誰から買うか」が重要になる。
企業のストーリーは、 その「誰なのか」を伝えるための材料になります。
企業のストーリーは集客にも影響する
集客というと、 広告を出す、SEOを行う、SNSを更新するといった、 「どうやって人を集めるか」に目が向きやすくなります。
しかし、人が集まったあとに、 その会社へ興味を持つ理由がなければ、問い合わせにはつながりません。
たとえば、同じようなコーヒーショップが二つあるとします。
一方は、
「厳選したスペシャルティコーヒーを提供しています」
という店。
もう一方は、
「会社員時代、毎朝一杯のコーヒーに救われていた店主が、“仕事へ向かう前に少しだけ気持ちを整えられる場所”をつくりたくて始めた店」
だとします。
コーヒーそのものの品質に大きな差がなかったとしても、 後者には「一度行ってみたい理由」があります。
ストーリーは、商品の性能そのものを変えるわけではありません。
しかし、
その商品や会社に興味を持つ「理由」を増やすことができます。
そして、その小さな興味が、 Webサイトを見る、商品について調べる、問い合わせるといった次の行動につながっていきます。
関連記事:集客しているのに問い合わせが来ない原因
集客は人を集めるだけでは終わりません。 興味・理解・信頼から問い合わせまでの導線については、 集客しているのに問い合わせが来ない。原因は「人を集めること」の先にある でも詳しく解説しています。
採用でも企業のストーリーは重要になる
採用でも同じことが言えます。
給与、休日、勤務地、福利厚生。
こうした条件はもちろん重要です。
しかし、求職者が会社を選ぶときに見ているのは条件だけではありません。
- どんな人たちが働いているのか
- なぜこの会社はこの仕事をしているのか
- 何を大切にしている会社なのか
- どんな未来を目指しているのか
- 自分がここで働くと、どんな経験ができるのか
こうした情報も、応募先を決める大きな材料になります。
特に中小企業では、 大企業と同じ給与や福利厚生で勝負できないケースもあります。
だからこそ、
「この会社はどこから来て、何を大切にし、これからどこへ向かうのか」
を伝える意味があります。
企業のストーリーを知ることで、 求職者は単に求人票を見るのではなく、
「この会社のこれからに、自分も参加してみたい」
と考えられるようになります。
関連記事:求人サイトだけに頼らない採用へ
求人条件だけで競争するのではなく、仕事や会社の魅力を普段から伝え、 少しずつ「採用できる体質」をつくる考え方については、 求人サイトに頼らない採用へ。中小企業が「採用に困らない体質」をつくる方法 で詳しく紹介しています。
ブランディングとは、ストーリーを積み重ねることでもある
ブランディングというと、 ロゴ、色、フォント、デザインなどを思い浮かべることが多いと思います。
もちろん、それらもブランドをつくる大切な要素です。
しかしブランドは、 見た目を統一しただけでは完成しません。
なぜその会社が存在しているのか。
何を大切にしているのか。
どんな判断をする会社なのか。
逆に、何をしない会社なのか。
そうした考え方が、
- Webサイト
- SNS
- 広告
- 商品
- 接客
- 営業
- 採用
など、さまざまな場所で一貫して感じられるようになると、
「この会社って、こういう会社だよね」
という認識が生まれます。
それがブランドになっていきます。
つまり企業のストーリーは、 広告一本のためにつくるものではありません。
会社がさまざまな場所で発信するときの「軸」 にもなります。
企業のストーリーをつくるのは、案外難しい
ここまで読むと、
「だったら、自社のストーリーを書けばいい」
と思うかもしれません。
しかし、実際にやってみると意外と難しいものです。
どれだけ仕事ができる経営者や担当者でも、 自分自身や自社の物語を整理することが得意とは限りません。
むしろ、その会社に長くいる人ほど、
「そんなの普通だよ」
「どこの会社でもやっている」
「わざわざ言うようなことではない」
と思ってしまいます。
しかし、その「普通」の中にこそ、 その会社にしかないものが隠れていることがあります。
- なぜ創業したのか
- 最初のお客さんは誰だったのか
- どんな失敗をしたのか
- なぜその素材を使っているのか
- なぜその工程だけは手作業なのか
- なぜ特定の仕事を断るのか
- なぜお客様との打ち合わせに時間をかけるのか
本人たちにとっては当たり前でも、 外から見ると、それがとても魅力的なことがあります。
企業のストーリーは「つくる」より「見つける」
だから、企業のストーリーをゼロから創作する必要はありません。
多くの場合、 ストーリーはすでに会社の中に存在しています。
ただ、それぞれがバラバラになっています。
創業した日のこと。
経営者が大切にしている考え。
商品をつくったきっかけ。
過去の失敗。
現場の小さな工夫。
お客様との出来事。
これから実現したい未来。
それらを拾い上げ、
なぜ始まったのか
↓
何に向き合ってきたのか
↓
何を選んできたのか
↓
今どこにいるのか
↓
これからどこへ向かうのか
という流れに整理する。
そうすると、 その企業にしかないストーリーが見えてきます。
「うちにはストーリーなんてない」は、本当か
企業のストーリーについて話すと、
「うちには、そんな大したエピソードはありません」
と言われることがあります。
でも、個人的には、 ストーリーが何もない会社はほとんどない と思っています。
会社が存在しているなら、 そこには何かしらの選択があったはずです。
なぜこの仕事を始めたのか。
なぜ続けているのか。
何に違和感を持っているのか。
何を変えたいのか。
誰に喜んでほしいのか。
特別な事件が必要なわけではありません。
その人や会社が、何を見て、どう考え、何を選んできたのか。
そこにストーリーがあります。
大切なのは「何があったか」だけではなく、「どう見せるか」
ただし、良い材料があれば自動的に良いストーリーになるわけではありません。
どの出来事を使うのか。
何から話すのか。
誰を主人公にするのか。
どこまで説明するのか。
何をあえて語らないのか。
同じ会社について伝える場合でも、 その整理の仕方によって受け取られ方は大きく変わります。
そして、 この「演出する」「編集する」という作業は、意外と専門性が必要な領域 です。
真面目に事業を行うことと、 その魅力を物語として相手へ伝えることは、別の能力です。
だから、
「良い会社なのに魅力が伝わっていない」
「良い商品なのに、他社との違いが見えない」
ということが起こります。
関連記事:なぜ「感情が動くこと」が効果につながるのか
ストーリーが重要なのは、情報を分かりやすくするためだけではありません。 人の感情が動き、記憶に残ることで、比較されたときに思い出され、 「選ばれる理由」につながることがあります。 効果と感情・体験設計の関係については、 効果を突き詰めた先にあるのは、エンターテイメントだった でも詳しく書いています。
企業のストーリーは、文章だけで伝える必要はない
ストーリーというと文章を想像しがちですが、 企業の物語を伝える方法は文章だけではありません。
たとえば、
- Webサイト
- ブランドムービー
- アニメーション
- 採用動画
- 漫画
- キービジュアル
- パンフレット
- 店舗や展示空間
など、さまざまな方法があります。
重要なのは、 ストーリーに合わせて表現方法を選ぶこと です。
創業者本人の言葉が魅力的なら、実写インタビューがいいかもしれません。
商品の歴史を見せるなら、Webサイト上で時系列に見せる方法もあります。
過去の映像が残っていない出来事や、 企業理念、感情、未来像など目に見えないものを伝えたい場合には、 アニメーションが向いていることもあります。
関連記事:ストーリーとアニメーションの相性
ストーリーを伝える表現方法のひとつがアニメーションです。 物語がなぜ記憶や共感につながるのか、アニメーションとどう組み合わせられるのかについては、 ストーリーの効果とは?なぜアニメは人の心を動かすのか で詳しく解説しています。
ストーリーは「会社紹介」だけのものではない
企業ストーリーというと、 「会社の歴史を紹介するコンテンツ」 と思われることがあります。
しかし、ストーリーが使える場面はもっと広くあります。
商品・サービス
なぜその商品をつくったのか。 どんな課題を解決したかったのか。 どんな人に使ってほしいのか。
商品の背景を伝えることで、 スペックだけでは伝わらない価値が生まれます。
採用
会社が何を目指しているのか。 社員がどんな仕事をしているのか。 入社した人がどう成長していくのか。
「この会社で働く自分」を想像してもらうストーリーをつくれます。
広告
商品の特徴を並べるのではなく、 その商品を必要としている人の悩みから始め、 利用したことで生まれる変化まで見せる。
数十秒の広告にも、 小さなストーリーをつくることができます。
ブランディング
創業から現在まで続いている価値観や、 これから企業が実現したい未来を言語化する。
それがWeb、映像、SNS、採用、営業など、 さまざまな発信の軸になります。
MONDAY BLUEは、ストーリーを大真面目につくる
studio MONDAY BLUEでは、 アニメーション、映像、Web、イラスト、グラフィック、空間など、 さまざまな制作を行っています。
でも、私たちがつくりたいのは、 単に見た目の整った制作物だけではありません。
その会社や商品が、
誰で、なぜ存在していて、誰に何を届けたいのか。
そこを整理したうえで、 必要な表現を考えます。
ある会社では一本のアニメーションになるかもしれません。
別の会社ではWebサイト全体の構成になるかもしれません。
採用ページの一本のコピーになることもあれば、 15秒の広告に凝縮する場合もあります。
大切なのは、 無理にドラマチックな物語をつくることではありません。
その会社にすでにあるものを見つけ、相手に伝わる形へ変えること。
そのために、 ストーリーを大真面目に考えます。
studio MONDAY BLUEについて
MONDAY BLUEがどんな考え方で、映像・Web・グラフィックなどを横断して制作しているのかについては、 MONDAY BLUEについて でも紹介しています。
選ばれる理由は、スペックの外側にもある
商品が良いこと。
サービスが便利なこと。
価格が適正であること。
どれも当然、重要です。
ストーリーだけ良ければ、 商品そのものに魅力がなくても売れるという話でもありません。
でも、商品やサービスの力があるからこそ、 最後にストーリーが意味を持つことがあります。
いくつかの商品が並び、 それぞれに良いところがあり、 決定的な違いが見つからないとき。
最後に残るのは、
「私は誰から買いたいのか」
という問いです。
だからこそ、 企業にも、商品にも、人にも、物語があります。
そして、その物語を伝えることは、 決して子どもっぽいことでも、 不真面目なことでもありません。
自分たちは何者なのかを、相手に理解してもらうための、極めて真面目なビジネス設計。
それが、私たちの考える企業のストーリーです。
自社のストーリーが分からないという方へ
「うちには何を語ればいいのか分からない」
「会社の強みを聞かれても、うまく答えられない」
「商品は良いと思うけれど、他社との違いを言葉にできない」
そんな状態でも問題ありません。
むしろ、自社の中にいるからこそ、 何が外から見て魅力なのか分からなくなっている場合があります。
studio MONDAY BLUEでは、 最初から動画やWebサイトなど制作物を決めるのではなく、 会社や商品の背景について話を聞きながら、
- 何がその会社らしさなのか
- 誰に何を伝えるべきなのか
- どんなストーリーがあるのか
- どんな見せ方なら伝わるのか
から一緒に整理します。
STORY / CREATIVE
「うちには、どんなストーリーがある?」
そこから一緒に考えます。
会社や商品の背景を整理し、Web・映像・アニメーション・グラフィックなど、
伝えたい相手と目的に合った形へ落とし込みます。



