毎回のスタート地点は、デザインではなく、その回の音楽。
このコンサートは、バッハの無伴奏チェロ組曲を順番に演奏していくという明確な軸を持ったシリーズです。ただし、同じ作曲家・同じシリーズであっても、演奏する曲によって受ける印象は毎回異なります。
そのため、シリーズだからといって同じフォーマットを使い回すのではなく、毎回あらためて高木さんと打ち合わせを行い、その公演から感じた温度やリズムを自分なりに咀嚼してから制作しています。
深い茶色と有機的な曲線、静かな黒、室内のあたたかな光、森の緑と余白。完成した4回分を並べるとかなり違う表情をしています。それでも、すべてが同じ演奏家の時間としてつながって見える。その距離感を意識しています。
ポスターをつくる前から、制作は始まっている。
このシリーズでは、完成した写真を受け取ってレイアウトするだけではありません。撮影をお願いするカメラマンをご紹介し、撮影にも毎回同行しています。
どんな場所で、どんな光の中で、どの距離からチェロと演奏者を見せるのか。撮影時点から完成する告知物を想像しながら素材をつくることで、あとから無理に世界観を乗せるのではなく、写真そのものにその回の空気を持たせています。
写真・演奏・デザインを、別々の工程にしない。
撮影に立ち会うことで、その場で見えた表情や光、チェロの存在感をそのままデザインの起点にできます。写真を選ぶことと、文字を置くことと、音楽をどう受け取ったかが一本につながることを大切にしています。
実際の演奏会を知ることも、デザインの材料になる。
制作だけで関係が完結しているわけではなく、実際に何度かコンサートにも足を運んでいます。演奏中の静けさ、会場と演奏者の距離、チェロ一台から立ち上がる音の密度。それらを体感することで、写真や事前の言葉だけでは分からなかった部分も見えてきました。
音楽は目には見えません。だから告知物では、音そのものを説明するよりも、「この時間の中に入ってみたい」と感じる入口をつくることを目指しています。
THE 4TH EDITION4回目は、1枚の表と裏に、二つの公演。
4回目の告知では、表裏でそれぞれ別の公演を紹介する構成になりました。同じフライヤーでありながら、片面は明るく開かれた表情、もう片面は青みを帯びた静かな表情へ。二つの公演を一つにまとめながら、それぞれの音楽の違いが埋もれないように設計しています。
シリーズの統一感は、同じデザインにすることではない。
回を重ねるごとに写真も色もタイポグラフィも変化しています。それでも、毎回打ち合わせをし、撮影から関わり、演奏そのものを知ろうとする制作の姿勢は変えていません。
このシリーズでつくっているのは、共通テンプレートではなく、高木秀直さんが積み重ねていく演奏会そのものの記録と印象です。一回ごとの個性を尊重しながら、並んだときには一つの歩みとして残る。継続して伴走するからこそできるアートディレクションだと考えています。
撮影から、公演のその先まで。
カメラマンとの撮影、毎回の打ち合わせ、デザイン、そして実際の演奏会。制作物だけを見るのではなく、その背景にある音楽と人を知ることで、告知のためだけではない「その回の記憶になるビジュアル」を目指してきました。